読書とは、本を閉じたところから始まる

●井上富雄は三十八歳の若さで日本IBMの取締役になり、四十八歳のとき、常務の役職を退き国際経営コンサルタントとしての道を歩み始めた。冒頭の言葉は、ベストセラーになった井上の著書『ライフワークの見つけ方』の中にある。

 

●読書というと、ついページを開いているときのことを考えがちだが、井上の言葉によって、読書の新しい視点、つまり、読後の活用法に目を開かされる。

 

●井上は本を読んだあと、その内容を1ページ程度に要約する。その作業をしながら全体にもう一度目を走らせ、記憶の活性化をはかる。要約した後には、自分の意見、感想を簡略にまとめて書いておく。

 

●井上流の活用法の真価はそれから後にある。すなわち、読みっぱなしのままにしておかないで、活用する機会づくりを積極的にするのだ。その第一は、同僚や家族を相手に読んだ本のあらすじを話すことだ。話すためには、頭の中で筋を組み立てなければならない。その過程で本の内容の理解が深まる。

 

●また、話せば相手から質問が返ってくることがある。即答できないときは、読み直さなければならない。そこでさらに内容に対する理解が深まる。

 

●その第二は、社内や社外の会議や研修に臨んだ際に、読んだ本から引用して話すことである。このことは、会議や研修の参加者にとっても有益である。本人には内容の記憶の強化が進むというメリットがある。

 

●その第三は、内容のうちで、実行可能なものがあれば、早く実行に移すことである。実行が早ければ早いほどビジネスへの見返りが大きく、本の内容が血肉化し、忘れがたいものとなる。

 

●こうした三段構えの機会づくりで、一冊の本の内容を徹底的に活用し、理解していくようにすれば、読書は実戦的になり、本を
ビジネスの武器として使いこなしていくことが可能になるというわけである。