やってみせて、いって聞かせて、させてみて、ほめてやらねば、人は動かじ

●第二次大戦で連合艦隊司令長官として職務を全うした山本五十六は、開戦前から大局を見通していた軍人であった。アメリカを『眠れる獅子』とみなし、その底力を恐れ、戦いが長期化すれば、日本の運命は危ういと予測し、緒戦で勝利を飾って、戦いを有利に収束することを望んでいた。

 

●そうした山本の、大局の読める名将ぶりと、部下に見せた親愛の情が、今日もなお日本人に尊敬され、慕われる要素となっている。

 

●冒頭の言葉は、山本の人情の機微に通じた人柄をしのばせる名言である。また、この言葉は、今日のOJT(オン・ザ・ジョブ・ト
レーニング)の真髄をつくものともいえる。OJTは、「仕事を通して訓練する」という意味だが、頭だけでなく体全体で必要なことを見
に付けさせようとするものである。この教育法は、社員教育として最も効果的な方法だとされている。

 

●山本は、職務を果たすのに必要な基本知識、基本動作を労を惜しまず、具体的に「やってみせて、いって聞かせて、させてみて」教えた。

 

●それだけでなく、「ほめてやらねば」と、部下がうまくやったときは、ほめてやったので、上達のスピードがあがった。

 

●こうして山本は、部下が職務を「きれいに、早く、正確に」遂行できるよう訓練したのである。

 

●部下の仕事ぶりが悪い、思うように動いてくれない、と嘆き、人事教育部門を非難する前に自分で実地に訓練してやることが先決だ。部下は頭ではわかっていても、体がついていかないことがあるものだ。頭で理解していることを、行動に移し、できるようにしてやることが必要なのである。

 

●「俺は忙しいんだ。そんなことはしていられない」と、部下のOJTをおろそかにしていれば、いつまでも自分は忙しいままだ。仕事
の忙しさを減らす最良の方法は、部下が自主的な判断で動けるよう、育成訓練してやることである。