いやなことは自分がまっ先にやれ

●ホンダの創業者、本田宗一郎はエピソードの多い人物だが、彼の次のような雑談の中に、この言葉はある。
「僕はずいぶん部下に無理も言った。しかし、いやなことは自分がまっ先にやる、という主義をつらぬいてきた。
 外国人と浜松で輸出の話をして、宴会になったんだが、ワアワア騒いでいるうちに外人が入れ歯をなくした。便所に落としたらしいのだが、その料亭の便所のツボはものすごくデカイからね。不注意にかきまわしたら大変だ。
 そこで僕がもぐりこんで見当つけて、ソーッとかきまわしたら入れ歯があったんだよ。僕だっていやなんだが、落とした外人は入れ歯がないと困るからね。誰だっていやなことはいやなんだが、僕がやれば丸く納まるものな」

 

●リーダーが人を指導するのに大切な要素は、大勢の人に好かれることだが、好いてもらうには人の嫌がることをまっ先にやることだろう。それも明るい雰囲気の中でそれがやれたら、それにこしたことはない。本田宗一郎は天性そんな資質に恵まれていた。

 

●「人間、暗いところばかり見つめていると、暗い人間になってしまう」 とも彼はいう。物事を暗く考えてしまうのは誰にでもできる。
だが「悲観よりも楽観」何とかなるさ、と覚悟を決めることはむずかしい。難局になればなるほど、事態を明るく考えて、リーダーが
自らまっ先に立てば、かならず打開の道は開けてくるもの。これが本田流の楽天主義である。