宣伝は短く、たえずくりかえすこと

●ヒトラーの著書『わが闘争』のなかにある言葉である。

 

●ヒトラーの政治的宣伝のうまさは、その功罪はともかくとして、抜群であった。ヒトラーは、街頭やビヤホール、広場などで行った
演説に天才的な能力を発揮したが、この演説が強力な政治的宣伝の役割を果たしていたのである。

 

●ヒトラーは第一次大戦から戦後にかけて、政治的宣伝の理論と実践を熱心に研究し続け、不動のノウハウを身に付けた。それが、タイトルの言葉に集約されている。

 

●すなわち、「きわめて簡潔な考え方」をまず大衆に示すことだ。ヒトラーの場合、それは「みんなが手に入れたがっているよい生活
と仕事を与えるから、わたしを信じてついてこい」というものであった。

 

●第一次大戦に敗れ、混乱と貧しい生活の中にあったドイツの民衆は、たちまちヒトラーの掲げた目標に魅せられた。

 

●この目標をヒトラーは何百回も繰り返すことで、民衆を自分の熱狂的な信奉者にしたてあげていった。ヒトラーのすごさは、宣伝効果を高めるために、自分の声、表情、身振りのことごとくを生きた宣伝媒体としてたくみに使いこなせるよう研究し、専門家からも学び取っていったことだ。

 

●また、論理的判断力が弱まり、感情的に反応しやすくなる、たそがれ時を選び、ライトを効果的に生かすという雰囲気作りに意を用いたことも並みの感覚ではない。

 

●さらに、ナチスドイツのシンボルマークである鉤十字(ハーケンクロイツ)を、あらゆる場所、武器、日用品に使い、集団によるデモンストレーションを行うことで、宣伝の相乗効果をあげたことも見逃せない。

 

●ヒトラー流の宣伝のノウハウは、今日でも効果を発揮する余地は充分にある。そのためには焦点を絞った商品名の連呼、反復や、商品名入りの制服の着用などによって、商品名が消費者の末端に浸透するまでやりつづけることも一つの方法である。