自分を治めえぬ人は、人を治めることはできぬ

●団琢磨は、三井財閥の大黒柱として、各種の事業を手がけた。琢磨が次々と事業を成功させえたのは、部下の管理に手腕を振るったからだ。その管理の核になっているのが、タイトルの言葉にある自己管理であった。

 

●名経営者と評される人は、部下を治める前に自分を治めている。確固とした使命感と価値観を備え、首尾一貫した誠意と責任感で部下にのぞむ。その姿勢が部下を感化し、部下の自主的な自己管理を促すのである。

 

●部下管理の名手、経団連名誉会長土光敏夫も、
「管理者はまず自分自身を管理せよ。そうすれば部下を管理する必要も減る」
といっている。部下が自分を見習って自己管理をうまくやってくれれば、部下に命令し、指図することが少なくなるからだ。

 

●権限を委譲し、任せたあとは、部下が首尾よく業務を達成できるよう、「忠告、援助、激励」をすることだ。

 

●「これからの管理者は、命令者でなく要望者であり、統制者でなく援助者であり、批評者でなく共感者でなくてはならぬといわ
れる意味もここにある」
と土光敏夫はいう。

 

●組織のなかに自分を治められない管理者がいると、組織のたががゆるみ、業績も上がらない。そうした管理者は責任転嫁をしがちだから、部下はやる気をなくしてしまう。

 

●また、自分を治められない管理者は定見を持たないから、絶えず考えや評価がグラグラと変わる。したがって、何をするにも、
腰もすわらず、情緒も安定せず、優柔不断におちいる。部下は仕事以外のことに気を使ってしまう。

 

●人の上に立つものは、自分を治め、自分を管理するよう努めなければならない。そうできてこそ、部下を感化して、自主的な判
断と行動のできる人材に育て、責任を持たせて権限を委譲し、自分は大局的な立場から管理していけるようになるのである。