まず熟慮し、しかる後断行す

●ドイツの軍人で元帥。普墺戦争、普仏戦争に大勝し、ドイツ帝国の統一に貢献した人。彼は戦いに臨んでこの姿勢を忘れず、そしてオーストリア軍に勝ち、フランス軍に勝った。

 

●しかし、このことは軍事に限らず、ビジネスにおいても十分にいえる言葉である。まず事を起こすに当たっては十分に考え、そして決断したからには速やかに行動に移す。我々にはこの姿勢が大切で
あろう。

 

●決断といえばウシオ電機の牛尾治朗会長にこんなエピソードがある。

 

●それは昭和三十九年の経済界大不況のときだった。当時、彼のウシオ電機はハロゲンランプやクセノンランプなどの特殊電球を作っていて、カメラのリコーなどに納めていた。

 

●ところが不況で納入先のリコーが倒産の危機に瀕してしまった。そのとき、彼は引き続いてリコーにランプを納入すべきか否かの岐路に立たされた。取引先の銀行や会社の番頭重役たちは「リコーと
討死する必要はない」と出荷をとどめた。しかし、牛尾にすれば、リコーの市村清社長には恩義がある。個人的には市村と討死をしたい気持ちだった。

 

●出荷を続けるべきか否か、彼は一週間近く悩んだ。当時、彼は家業のウシオ電機を引き継いだばかりで、まだ三十二、三歳という経験の浅い青年経営者だった。若いとはいえ、彼が最大の権限を握る経営者であることも間違いなかった。一週間近く会議を行っても何の結論も出ず、幹部連はただ彼の顔色をみるだけだった。

 

●そこで彼は覚悟を決めて決断を下すのである。
「市村さんは恩義のある人、その人と一緒に死ぬことも人生じゃな
いか」
 として、倒産を覚悟でランプの納入続行を決断するのである。

 

●結果として、リコーの市村清は奇跡的ながんばりを見せ、リコーの立て直しに成功した。そしてウシオ電機もまた高度成長へのきっかけをつかむことになった。