自分が欠陥を持っていることはすばらしい
●自分の欠陥に気づくことは、リーダーには大切なことだ。自分にも欠陥があると自らわかれば「自分で何でもやっちゃ部下もついてこない。部下はやりにくくなる。だから社長は、何も知らんということを旗印にしたらいい」と彼は教える。
●「俺ぐらい欠陥の多い人物はいないよ」というのが彼の口ぐせで、本田技研では有名である。
●創業者の口ぐせがこれだから、社風としてお互いの欠点をあたたかく見守って「マイナスをプラスに転じよう」という努力があ
る。自ら語る彼の生い立ちは、「私は高等小学校までしかいかず、自動車の整備屋へ小僧として住み込んだ。機械いじりは好きだったが、子守や雑用ばかりでなかなか仕事を教えてもらえないのがつらかった。今までの人生で一番つらかったときです。
しかし、あれを我慢しなかったら、今日の本田宗一郎はない。世界へ出かけて『ミスター・ホンダ』と呼ばれる私はいない。学
校も出ず、小僧から叩き上げたからここまでこれたのでしょう。
技術者に必要なのは人間性です。オートバイでも自動車でも修理工場にもってくるときの客は、ひどく傷ついている。病人と思
えばまちがいない。技術にすぐれているばかりでなく、私はお客の心を治してあげるのです‥‥」
●以上の話には、いくつかのポイントが隠されている。が、そのうち、もっとも重要なことは彼がいかに人の気持ちをくみとろうと努力している人物かということであろう。自分に恵まれぬ青少年時代があるからこそ、他人の立場を思いやるやさしさがある。
●学歴がないことを自ら認めた技術者だからこそ、技術の背景にひそむ人間にも目を向けている。お客さんの心までを車の修理整備に巻き込んで考えている。
●ホンダの社業隆盛にとって、彼の存在の大きさがよくわかる話だが、「ちょうどパズルに取り組むように、あの人は相手のことを考える人だ」
こんな批評もある。